ポイント
メタバースの世界観を実現するために、さまざまなテクノロジーが利用されています。そこで、今回は大きなテクノロジー要素として7つをピックアップしました。今後も新たなテクノロジーが登場すると考えられるため、引き続き注視していきます。
本ページでは、これらのテクノロジーのざっくりなイメージを捉えるための記載に留めています。今後、これらのテクノロジーについて深掘りをしていきたいと考えています。
- Web3
- デジタルツイン(Digital Twin)
- 5G(高速なモバイルネットワーク)
- バーチャルリアリティ(Virtual Reality)
- AI(人工知能)
- エッジコンピューティング(Edge Computing)
- ブロックチェーン(Blockchain)
Web3
Web3とWeb 3.0は混同されがちですが、Web3はメタバースにおける分散型の思想を包括する概念であり、セマンティック・ウェブ(ウェブのブラウジングをHTMLだけでなくXMLなどに拡張していく考え方)であるWeb 3.0とは異なります。
Web3のため、1や2があるわけで、、Web1〜Web3までをシンプルに考えると、
Web1:閲覧
Web2:閲覧、発信
Web3:閲覧、発信、情報の保有
Web1は一方的にWebサーバから情報が提供され、それらを閲覧する仕組みとなります。初期のインターネットですね。Web2はWebサーバからのデータ発信を閲覧するのみではなく、情報の発信も含まれる、現在稼働している、ほとんどのインターネットサービスの姿になります。
Web3は後述するブロックチェーンテクノロジーにより、ユーザーも情報を保持(「情報の保有」は厳密にはブロックチェーン上に情報が記録されることを指し、ユーザーが直接情報を「保有」するという意味合いとは異なります。)することで、プラットフォーム運営に参加できる仕組みとなります。つまり、分散型の考え方となり、メタバースにおけるお金、、つまり、仮想通貨の仕組みと同じ思想になっています。
また、自分たちのメタバースを自分たちで分散型の自立した組織(DAO=Decentralized Autonomous Organization:分散型自立組織)として運営していく動きにつながるものです。
デジタルツイン(Digital Twin)
現実と同じ空間をデジタル上(仮想空間上)に構築し、現実を仮想世界にてシミュレーションできるような仕組みのことです。現実を仮想空間上でシミュレートすることで、仮想空間での作業を現実世界に適用するなど、活用の幅が広がることが期待されます。
デジタルツインはメタバースで指し示す仮想現実とは異なる考え方であるとの見解もありますが、私はメタバースの概念の中にデジタルツインも含める考え方の方がしっくりくる気がします。
現実の世界とはかけ離れた世界観もあり、リアルに近い世界観もあることで、ビジネスへの展開(例:製造業における工場のシミュレーション、都市計画における交通シミュレーションなど)も含めて広がりが増えると考えるからです。
5G(高速なモバイルネットワーク)
5Gはモバイルネットワークの第5世代移動通信システムを意味します。高速大容量通信、低遅延、多数同時接続がポイントとして挙げられますが、1世代前の4Gのおよそ20倍の通信速度になるため、メタバースのような仮想現実空間における大容量データ通信が必要なサービスにおいては、重要なインフラ要素となります。
仮想世界へのアクセス端末は、自宅からだけではなく、様々な場所からアクセス可能なスマホやタブレットのようなモバイル端末も含まれるためです。
この5Gはメタバースの実現にとって重要ではあるものの、他に挙げている様々なテクノロジーとの連携が重要となります。
ちなみに、、私も勘違いしていましたが、「5G」と「5GHz WI-Fi」は異なる概念ですので、ご注意ください。
バーチャルリアリティ(Virtual Reality)
バーチャルリアリティ(Virtual Reality、VR)について、いまさら説明は不要だと思いますが、現実ではない仮想現実において人間の五感をテクノロジーによって刺激し、あたかもそこに現実がある様にする仕組みのことです。現在は視覚、聴覚、触覚の一部が実現していますが、今後はさらにテクノロジーの進化により、さらなる没入感が得られるデバイスになっていくと考えています。当初、メタバースとバーチャルリアリティはほぼ同義語だと考えていましたが、現在では、バーチャルリアリティはメタバースを構成する要素の一つであり、メタバースサービスへの重要なアクセス手段であると認識しています。
AI(人工知能)
AI(人工知能)についても、いまさら説明は不要だと思いますが、人間の知能部分をコンピュータによって代替するテクノロジーになります。メタバースの世界観の中で、人間が全てに対して常に対応することができないため、AIが中心となった世界になっていきます。AIの急速な発展は明らかですが、メタバースにおいてAIがどのように活用されていくのか、注目していきたいと思います。
エッジコンピューティング(Edge Computing)
エッジコンピューティングとは、分散型の処理のことであり、クラウド上のサーバー側だけではなく、ユーザーに近い位置に計算処理装置を配置し、データを処理することにより、ネットワークへの負荷を下げる、サーバーへの処理負荷を下げるなどの効果をもたらすものです。大規模なデータ処理やユーザー間でのデータ処理はクラウド側で実施し、エッジコンピューティングはリアルタイムにユーザーから生成されるデータを処理することで、メタバースにおけるスムーズな体験(例:VR酔いの軽減、リアルタイムなインタラクションの実現など)を実現します。
ブロックチェーン(Blockchain)
ブロックチェーンは分散型の台帳システムであり、取引履歴などの台帳を集約されたサーバー上で管理するのではなく、ユーザー全員が相互に保持することで、情報の可視化、信頼性の強化によって暗号化資産(仮想通貨)の取引などに使われているテクノロジーとなります。ブロックチェーンが理論ではなく、具体的に活用され始めたことにより、このメタバースの世界に簡単にコピーできるデータではなく、オリジナルという概念を取り込むことができ、NFTなどの実現にも繋がっています。
まとめ
本記事では、メタバースを支える重要なテクノロジーについて解説しました。分散型インターネットの基盤となるWeb3、現実世界のシミュレーションを可能にするデジタルツイン、高速通信を支える5G、仮想空間への没入感を提供するバーチャルリアリティ、自動化と効率化に貢献するAI、リアルタイムなインタラクションを可能にするエッジコンピューティング、そしてデジタル資産の基盤となるブロックチェーン。これらはメタバースの根幹をなす重要な要素です。さらに、これらの技術を支え、より豊かな体験を実現するために、高品質な3Dグラフィックスを提供する3Dモデリング/レンダリング技術、自然な操作を可能にするインタラクション技術(例:ハンドトラッキング、アイトラッキング)、臨場感あふれる音響体験を提供する3Dオーディオ/空間オーディオ、そして安定した高速通信環境を提供するブロードバンド/ネットワーク技術(5Gに加え、光回線やWi-Fi 6Eなど)も重要な役割を果たします。これらの技術はそれぞれ独立したものではなく、相互に連携し、補完し合いながら、メタバースという新たなデジタル世界を形作っています。今後の技術革新によって、メタバースはさらに進化していくことが予想されます。